2008年6月27日金曜日

退院

昨日【入院17日目】(タルセバ服用15錠目)退院した。

入院によって、初期に現われる副作用(私の場合は皮膚疾患だけ)の確認、及びその処置の仕方。心配される重度な副作用(間質性肺炎、肝臓数値の上昇等)のチェックや今後出た場合の対応の仕方を十分に指導を受けての退院ということになる。

2週間強の入院は今までも何度か体験しているので、特にストレスなく過ごせたといえる。悪く言えば、変な場慣れをしたということか。

それでも、待ちに待った退院である。18日目の我が家は精一杯の背伸びができる場所だ。入院中のストレスはないといっても、6時の起床と10時の消灯、日中動ける範囲等々日常とは違うことがいくつかあるので、すべてを含めて我が家にいる良さには適わない。

副作用の方は前回書いたときと大差はない。副作用は今のところ身体と顔に現われた皮疹だけである。身体の皮疹はそれほど変わらない。新しい皮疹が現われ、古い皮疹が消えて行く。腕や足が多く、その他は少ない。

問題は顔に現われた皮疹。顔全体が赤みがかり、ごつごつとした無色の湿疹が出ている。加えて口や鼻の周辺に粟粒状の赤い皮疹が出てきた。体の方はイレッサのときと同じようにそれほど痛くもかゆくもない。ところがそれと違って、顔の皮疹はかゆみがあり、触れるとひりひりと痛みがある。ひげを剃ることもできない。
1日中、薬を塗ってべたべたとしているので、木村拓也似の容姿も台無しである。

これからどのように変化していくのか分からないが、どちらにしても引きこもりは避けられそうもない。

それでも、病院へ行くときなどは外出しなければならない。大きなマスクにサングラス、帽子・・・などと家族で冗談を言って笑ったが、芸能人の変装と同じでその方が人の注目を引いてしまいそうだ。

病人だから病院へ来るんだと割り切って、平気な顔をするのがいちばん目立たないだろう・・という結論にになった。

2008年6月25日水曜日

副作用で引きこもり

今日は【入院16日目】(タルセバ服用14錠目)

日曜日位から全身の皮疹とは性格の違う顔の皮膚炎症が出ている。全体に赤みを帯びて少し痒みがある。眼の周辺が赤みが強く眼球にも痒みがある。何かのアレルギー反応のようだ。その対応として昨夜から新しい抗ヒスタミン剤が支給された。今日は午後皮膚科検診が予定されている。

身体の皮疹は状態は似ているが、日々古い皮疹が消えて、新しい皮疹が出ている。古いのも跡が残るので、全体としてはひどくなっている印象。

今日がちょうど予定の2週間目、幸いひどい副作用はないので今の状態が続けば多分明日退院になるだろう。

患者からみると、医師側が数ある副作用の中で特別注意しているのは間質性肺炎や肝臓の数値の上昇、骨髄抑制等々であり、皮膚疾患や、吐き気、脱毛などの副作用はどうも軽く見ているように感じることがある(実際はそうではないが)。

命を落とす危険のある副作用は要注意であることに依存はないが、そうかといって皮膚疾患や脱毛など外見に現れる副作用だって患者にとっては命を落とすのと変わらないくらい気の重いことである。これは患者になって見なければなかなかその気持は分からないであろう。

このような副作用は間違いなく患者を引きこもりにする。仕事を持っていたり、どうしても出なければならない場面には引きこもっていられないだろうが、その第一歩には大変なエネルギーを必要とする。

これも癌になって困ることのひとつである。

2008年6月21日土曜日

ちょっと遅めの父の日プレゼント

今日は【入院12日目】(タルセバ服用10錠目)

今日は朝から本格的な雨天。梅雨の中休みも終って、梅雨の後半に入ったようだ。

昨夜から、イレッサの時には出なかった顔への皮疹が出てきた。数は鼻の頭に一箇所、右頬に3箇所、左頬に2箇所。皮疹といっても身体に出ているものとは形状が違う。例えるとちょうど蚊に刺された後のように感じ、色がなく、若干痒みがある。色がないので最初はあまり目立たなかったが時間が経ったら全体に赤みを帯びてきた。

身体の皮疹はパラパラと若干数が増えているが、ザーネ軟膏の効果で殆ど消えたものもあり、全体としては大きく変わってはいない。

今日は長女(結婚して横浜に住む)と次女(同じく横浜に住む)と次女の娘(孫)が見舞いに来てくれた。そして、やや遅れたが父の日プレゼントを持ってきてくれた。こんな時はいつものことだが、まもなく2歳になる孫が主役となる。

大勢の人が集まるようなときは病室ではなくて、デイルームにある個室を使う。病室ではあまり大騒ぎをすると周囲に迷惑になるし、椅子もないので長時間はいられない。各階に2つ個室があり、無料なのだが、殆どの患者さんはそんなことは知らない。入院が7回目ともなると、この病院のことは隅々まで分かっているので、部屋の確保などはお手の物だ。

長女は勤務があるので明日横浜へ帰るが、次女はご主人のありがたい配慮で主婦業のお休みをもらって1週間ほどこちらに滞在してくれるようだ。来週は私の退院などがあるので娘がいてくれると助かる。

また孫がいることで老夫婦の心の支えになってくれそうだ。いつものさびしい生活にも灯りが灯ったようになることは間違いない。

2008年6月18日水曜日

居酒屋タクシー

皮疹は16日をピークに数は増えていない。ザーネ軟膏を1日2~3回塗ったせいか、それぞれの皮疹もやや色が淡くなったような気がする。その他の変化は今のところなし。

沖縄が梅雨明けしたらしい。本州の梅雨明けはまだまだ先だろうが、ここのところしばらくは雨が降っていない。

そんな天気と同じように世間のニュースも気が重くなるものばかりだ。

四川大地震から、岩手・宮城地震ではやはり自然災害の恐ろしさを見せ付けられた。この種の災害報道は最近、際立って映像が豊富になっただけにその恐ろしさが倍加されて伝わってくる。

自然災害だけでなく、後期高齢者医療制度や秋葉原大量殺傷事件、居酒屋タクシー等々気が重くなるようなニュースが次々と起きている。地震の自然災害だけでなく、この種の人災にも痛めつけられる日本はこれから一体どうなってしまうのか心配になる。

居酒屋タクシーなどは今回民主党の長妻議員が指摘して火がついた。内容にも驚いたが、永年このような慣行がずーっと行われてきたことにも驚かされる。民間の会社ではありえないことだろう。お役所という所には自浄作用はないのだろうか?

取り締まるべき幹部までも腐っているということか?ダレきっているとしか思えない。そういえば、ちょっと前、自分で倫理規定を作っておきながら、家族ぐるみでどっぷりと接待に浸かって逮捕された防衛庁の長官がいたっけ・・。

仕事が忙しいなどと言い訳をしているようだが、タクシーで出される生暖かいビールとピーナッツ(かなにか分からないが)をもらって飲んで、情けなくないのだろうか?例え薦められても「それはちょっと」と言って断ることができないのだろうか?

皆さん、彼らの給料だって、彼らが飲むビールやおつまみ(タクシー料金に上乗せ)だって、皆税金だと思うと腹が立ちませんか?

2008年6月16日月曜日

ツバメと再会

副作用として一番多く見られる皮疹が14日(3錠目)の夜に現れた。場所は両腕、赤い小さな皮疹だが、痒みはない。最初気付いた時は両腕とも数箇所だったが、昨日、今日と数が徐々に増え、場所も背中、足に広がってきた。4年前イレッサの飲み始めの時は6日目に初めて皮疹が現れたが、今回はそれより早く現れた。最初顔に出やすいという説明だったが、私の場合は今のところ顔には出ていない。個人によっていろいろなパターンがあるようだ。

その他の副作用は今のところ出ていない。

薬の効果は約1ヵ月後の7月16日(水)にCT撮影にて確認する予定。

今日も梅雨の中休み50%の空は雲に覆われていて、富士山も全く厚い雲の中だ。窓の外を見ていたら、窓の1メートル位はなれたステンレスの手すりにツバメが留まってさえずりながら毛繕いをしている。

昨年も書いた記憶があるので、遡って見てみたら6月24日にやはり病室から見たツバメのことを書いている。昨年と病室が違うので外の風景は違うのだが、今年は昨年の裏側に当たる。コの字型になっているビルのちょうど4階と、5階の軒下の角の部分に巣が2つ見える。

新築ビルとツバメの巣はなじまないが、できた巣を取り去らないのはちょっとした粋な計らいといえる。

子供の頃は大きな民家の軒下にツバメの巣をよく見かけた。

ツバメは人が住むにぎやかな環境に営巣するという習性から、地方によっては、人の出入りの多い家、商家の参考となり、商売繁盛の印ともなっている。

今は昔と違って自然破壊が進んでいるので、ツバメも餌を探すのに苦労するだろうがこの近辺は山岳部なので比較的楽なのだろう。

2008年6月14日土曜日

梅雨のひとやすみ

入院も今日で5日目になる。タルセバは今日で3錠目だが、特段の変化は現れない。

今年の梅雨は何年かぶりの梅雨らしい天候のような気がする。ここ何年かはカラ梅雨が多く、梅雨明けも境目がよく分からず、何日か過ぎてから遡って何日が梅雨明けだった・・というような発表が多かった。

連日の梅雨空のなか、昨日からは梅雨の一休み。せっかく富士山の見える病室へ入ったのだが、昨日4日目にして初めて富士山が姿を現した。今日も雨は一休みで、富士山は雲から頭を出している。

私はもともと基本的には晴れが好きだが、外出の予定のない時の雨はそれほど嫌いではない。じっくり落ち着いた気分になるものだ。

従って、入院中のように束縛されている身には晴れているより、雨の方がずっと気持が落ち着くから不思議だ。外の雨をぼんやりと眺めながらいろいろな考えごとをする。

雨を見ながらこんな話を思い出した。

日本の曲(楽曲)のタイトルには天候がよく使われるが、どの天候が一番多いか?

殆どの人が晴れが好きなので、晴れが入った曲が多いと思うだろう。

正解は「雨」だそうだ。しかもダントツらしい。1位が雨で400曲、2位が晴れで30、雪20その他10以下だそうだ。

そういえば、雨の付くタイトルは「あの歌、この歌・・」といくつも思いつくが、晴れの方はあまり思い浮ばない。

好き嫌いと関係なく、雨の降る風景の方がドラマになりやすいということか?

2008年6月12日木曜日

タルセバ服用開始

いよいよ今日からタルセバ服用開始。

タルセバはイレッサと同じ系統の分子標的薬で、イレッサより成分の強い薬のようだ。イレッサもタルセバも切除不能な再発・進行性で、化学療法施行後に憎悪した非小細胞肺がんの治療薬として認可された薬とされている。

従って、イレッサが効かなくなった患者には再度効果が出る可能性がある薬として期待されている。

副作用もイレッサと殆ど同じで、発疹、下痢、皮膚乾燥、そう痒症、肝臓疾患などが多いようだ。重篤な副作用として間質性肺炎も要注意のようだ。国内第Ⅰ、Ⅱ相試験では123名中6名(4.9%)が間質性肺炎になり、そのうち3名(2.4%)が死亡されたという。

この間質性肺炎の率はかなり高率のように思うが、一般抗がん剤でも1~3%は副作用で亡くなる人がいるようなので、抗がん剤そのものがリスクの高い薬剤であることを思い知らされる。

癌そのものが死亡率の高い病気で、それを治す薬もさらにリスクの高い薬であるということはとにかく癌にならないことがいちばんだとつくづく考えさせられる。正に「前門のトラ、後門のオオカミ」「行くも地獄、戻るも地獄」の心境である。

4年前、イレッサを始めるときもこんなことを考えたような気がする。

でも、「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」3日後にはこんなこともすっかり忘れるであろうことも間違いない。副作用の出現に細心の注意をすること、処置を早くすることしか対策はない。

「tamyのつぶやき」トップページに「闘病記・タルセバ服用」のボタン(上段・右端)を付けたので、詳細をお知りになりたい方はご覧ください。(旧ダイアリーのボタンをはずしました)

2008年6月10日火曜日

本日入院

前回の定期健診の際、9日以降で入院予約をした。
長い人で2週間ぐらいは待たされるだろうと聞いていたので、まだまだ先かなと思っていたが、昨日連絡があり、本日入院した。今日から2週間の病院生活が始まる。

昨年は抗がん剤の点滴で、都合4回ほど入院した。5年前の手術時、4年前のイレッサ服用も含めると、今回で7回目になる。そういう意味ではすっかり入院慣れした。

今回の入院では次の薬(タルセバまたは治験薬)を服用するための入院なので、痛いとか、苦しいとかは何もない。入院中やることといえば朝1錠の錠剤を飲むだけ。痛いとか、苦しいとかはないので楽といえば楽だが、束縛された退屈との戦いである。

それでも、退屈との戦いには慣れたもの、対策はばっちりだ。本や、ラジオも持ち込むが、結局はメインはパソコンになる。病室にはLAN端子があるので、それをつなげばすっかり自宅と同じ環境になる。前回からワンセグチューナーをパソコンにつけた。部屋のテレビは有料なので、パソコンで殆どの番組を見る。ワンセグなので、携帯よりやや大きめの画面しか見られないが、殆どは「ながら族」で、流しているだけのことが多いので、それで十分である。テレビで見るのは大河ドラマと、衛星の大リーグ中継(あればサッカー中継)ぐらいで、あとはパソコンのテレビで十分だ。

病院は山の上にあるので、眺望はよい。南向きなら駿河湾、北向きなら富士山が見える。病室は選べないので部屋の向きで景色は変わる。今日入った部屋は北向きで寝ながら富士山が見える位置だ。ただ、今頃は連日天気が悪いので、入院中何日富士山の顔が拝めるか?

2008年6月7日土曜日

蚊帳(かや)のある風景

今年は梅雨入りして以来、毎日梅雨らしいはっきりしない天候が続いている。

例年、蒸し暑い時期になると、蚊に悩まされる。我が家の周辺には流れの悪いドブがあって、季節に関わらず蚊が大発生する。最近の住宅は密閉性が高いので、外には蚊が柱を作っても、家の中には殆ど入ってこない。

それでも、時々どこからか蚊が入り込んで、家内が丸めた新聞紙を片手に家中を追い回している姿を見かける。

昔は梅雨時から蚊帳(かや)を出したのを思い出す。冬の間閉まっておいた蚊帳を皆で広げると、独特な匂いがしたものだ。子供心に蚊帳の中ではしゃぐことが楽しい思い出として記憶に残っている。今の日本ではとっくの昔に蚊帳が消えたと思っていたら、どうやら世界中で活躍しているらしい。

先日、「ガイアの夜明け」で、日本の蚊帳がODAで大活躍している様子が放映されていた。アフリカやバングラデシュなどでは蚊によるマラリア感染に悩まされているが、日本の蚊帳を現地で普及させることで、マラリアを撲滅した村があり、とても感謝されているらしい。

特に2000年、世界保健機関(WHO)から蚊帳の増産とアフリカへの無償技術移転を依頼された住友化学はタンザニアに工場を2箇所建設しているという。

2003年からODAやUNICEFを通じた支援で3年間で200万個以上の蚊帳を世界各国に配布しているということだ。 ナイジェリアでは、テレビドラマやコマーシャルを通じたPR活動を進めた結果、普及が進んだ。

昔、蚊帳の中で子供達がふざけあった風景がはるか離れたアフリカで今繰り広げられているのを想像すると、何か複雑な気持になるものだ。

2008年6月4日水曜日

接骨院・整骨院

最近、産科医や小児科医の不足が深刻で、全国で問題になっている。医師全体が不足かというと、そうではないらしい。特に歯科医は毎年何千人という歯科医が新たに増え続けているために全国どこでも歯科開業医が乱立気味で、ワーキングプア並みの収入の歯科医も結構多いらしい。

もうひとつ、医院ではないが、接骨院・整骨院の類が近所に雨後のたけのこのように何軒も開業している。柔道整復師(略して柔整師というようだ)は専門学校を卒業して国家試験に合格すれば比較的簡単に開業できるので、開業希望者が年々増えている(こちら)。

最近、近所に開業した整骨院のチラシを見ていると、「各種保険使えます」と書いてある。何でも健康保険が使えるような印象を与えるが、実際健康保険が使えるのは骨折、脱臼、ねんざ、打撲、肉離れだけで、肩こりや、加齢による腰痛などには健康保険が使えない。 ところが、受診をした高齢者は皆一様に保険が使えたという。それはなぜか?

多くの柔整師は腰痛の治療をした場合、「腰部捻挫」等と、保険がおりるような表現に変えて保険を請求することが多いようだ。多くの健康保険では医院の請求に比べると、金額が少ないので、審査もなくそのまま支払うケースが多いのだそうだ。治療内容の改ざんだけでなく、1箇所の治療を2箇所、3箇所と増やして請求する例も多いと聞く。

10年程前にも柔整師の不正請求のことが話題になって、新聞で一大キャンペーンが行われたことがあったが、最近また接骨院・整骨院の数が増えており、受診する高齢者も増えていることから、不正請求の金額が年々大きくなっているようだ。

柔整師が保険者に請求した治療内容は受診した患者に聞いてみれば一目瞭然なのだが、実際はそのようなことは殆ど行われていないようだ。数は少ないが、保険者によっては柔整師の請求内容を患者本人に聞いて、内容が違っている場合は支払いをしないという処置をしているところもあるようだ。

いうまでもないが、まじめな柔整師もたくさんいる。というか、普通は不正などはしない。ただ、不正をする柔整師の率が医院の率より高いということである。

「マッサージのような行為に公的保険が使われているなら、一番の被害者は保険料を払う国民だ」ということで、保険料を払う被保険者がバカを見る。従って、その種の調査は定期的に行われ、不正をしている接骨院・整骨院には退場してもらわなければいけない。

2008年6月1日日曜日

長寿は罪?

最近のNIKKEI NETに「日本が長寿世界一を維持、男女平均83歳・06年時点、WHO調査」という記事が出ていた。世界保健機関(WHO)がまとめた2008年版世界保健統計では、2006年時点で日本の平均寿命は男女平均83歳で世界一を維持した。男女別では女性は86歳で単独首位。男性は79歳で05年に続いて2位となったそうだ。

今、正に「後期高齢者医療制度」で国中大騒ぎになっているときにこのニュースを読むと誰でも複雑な気持にさせられる。

テレビ「笑ってこらえて」の冒頭に「ダーツの旅」というコーナーがある。所さんが日本地図に向かって針を投げ、刺さった場所へ取材に行くというシンプルな番組だが、大抵は都会から遠く離れた田舎町で出遭った人と話をするものだが、どこの場合も出遭うのは殆どが高齢者だ。

「おばあさん、おいくつですか?」というお決まりの質問に「いくつに見える?」と問い返すご老人が多い。質問者は若いので70歳以上の人の年齢など想像も付かないのが普通だが、歳を聞いて「お若いですね」がこれまたお決まりの返事だ。それを聞いたご老人が喜ぶのだが、素朴なそのやり取りが面白くて今でも人気がある。

ことほど左様に、日本では高齢になることは美徳だったし、一族の誉れでもあった。今から何年前か家内の祖母は百歳(今は故人)を越えたとき、市長がわざわざ自宅まで訪問してお祝いをしてくれた。

世界中で「敬老の日」があるのは日本だけだという。今揉めている「後期高齢者医療制度」の背景では、これから日本では歳をとることは肩身の狭いことになってしまう。財政の苦しい台所事情は分かるが、そこにお役人の知恵と工夫と情熱さえあれば解決できない問題はないと思うのだが。

諸悪の根源は「少子高齢化」。子供が少なく、高齢者が多いという構図が続くなら、若年者が高齢者を養うという一方通行の形だけでなく、元気なお年寄りが現役としてもっと活躍しやすいように環境整備することではないだろうか。高齢者も収入があれば、病気の高齢者を養うことにはそれほどの抵抗はないと思うのだが。