2008年9月27日土曜日

タルセバ副作用の肝臓障害

日経メディカルオンラインの2008年9月24日の記事「タルセバ服用患者が肝腎症候群および急激な肝不全で死亡 FDAが医療従事者に注意喚起」が目に付いた(記事はこちら)。

FDAというのは米食品医薬品局であるが、ここの発表では非小細胞肺癌治療薬のエルロチニブ(商品名タルセバ)の服用により、肝腎症候群(hepatorenal syndrome)および急激に進行した肝不全により死亡した患者がいたという。米国でエルロチニブを販売するジェネンテック社およびOSIファーマシューティカルズ社が、医療関係者向けに「important safety information」を配布したようだ。

この記事が目にとまったのは、私もつい先日タルセバの副作用による肝臓疾患で大変な目にあったからである。

私の場合、今年の6月12日からタルセバを飲み始め、35錠飲んだところで全身に出たあまりにひどい皮膚の副作用でダウン、休薬となった。休薬をして皮膚も治まりかかった2週間後に受けた定期検診で肝臓の数値が上昇した。GOT107(10~40)、GTP331(5~40)。( )内は許容値なので、かなり高かった。それまでの血液検査ではいずれも許容範囲内に収まっていた。

イレッサの時も同じような数値が出たことがあって2週間ほど休薬をしたことがあった。

タルセバをやめて、2週間もたって数値が上昇しているので、原因が良く分からない。そのとき服用していた皮膚科関係の薬等もすべてやめてさらに2週間たったころに数値がようやく元に戻ったので翌日からタルセバを再開した。

そしてそれからが大変だった。1週間後(タルセバ再開5錠目)の検査で受けた血液検査でGOT 640、GTP 1,025という通常では考えられない異常な数値になった。その場で緊急入院となったが、その後の経過はブログに書いたとおりである。

幸い私の場合はその後の入院治療で何ごともなく元に戻ったが、もちろん個人差はあるが、タルセバを飲まれている方は念のため注意したほうが良いようだ。注意書きなどにもあまり触れられていないので、日本でもタルセバの副作用として肝臓障害も重篤な副作用として注意喚起を呼びかけた方がよさそうだ。

2008年9月24日水曜日

定期検診

今日の定期検診は15日に行った治験薬の適性検査の結果、8日に行った骨シンチ、22日に行ったCTの結果、本日の採血、レントゲン撮影の結果の説明が行われた。

●骨シンチ 全身の骨への転移の確認。転移は全くない(従来通り右肺の中だけに限定)。

●CTの結果 前回7月16日に撮影した映像に比べると、2ヶ月強経過しているので、ガンの影はやや大きくなっている。

●血液検査 すべての項目が正常範囲内におさまっている。

●レントゲン撮影 前回の映像との比較では変化なし。

●治験薬の適性検査 治験の適性検査は適合。前回書いたように今回の治験人員3名枠の最後の1名には競合人員が3名いて、その1名には入れなかった。
但し、治験人員3名を1グループとして投与薬量を変えて何組かあるので次の3名(50日後スタート)には優先的に入ることができそうだ。

従って、ここで既成の抗がん剤(ドセタキセル、TS-1)をスタートするか、次の治験薬まで待つかを決めなければならない。既成の抗がん剤をスタートすると治験は権利を放棄することになる(治験薬はその前40日間は休薬が条件なので)。

既成の抗がん剤は効き目への期待値が低い(抗がん剤を重ねるごとに効き目は悪くなるようだ)。骨髄抑制、脱毛等の副作用が強い。新薬は先行の治験では副作用が少なそう・・・等々を考慮して間隔は多少空いても次の治験薬に挑戦することとした。但し、治験薬投与までの期間が空き過ぎるので、中間で再度CT撮影を行って、急速にガンが進行する場合は予定を変更することも考慮しておく・・・ということが決まった。

2008年9月19日金曜日

篤姫快調

NHK大河ドラマ『篤姫』は正月に始まり、早いものでまもなく4分の3が終り、フィナーレに向かおうとしている。

大河ドラマが好きなことは前にも何度か書いたが、『篤姫』も事前に原作本を読み1週も欠かさず、楽しみに拝見している。特に今年は今までと違って地デジのハイビジョン放送で見ているせいか、その色彩の美しさに圧倒されている。本編はもちろんだが、タイトルバックまでもが美しくて引き込まれる。CGを生かした和風のデザインの美しさには9ヶ月経った今でも飽きることはなく、以前はトイレタイムだった長いタイトルもついつい最初から見入ってしまう。

大河ドラマはいつも歴史ものなので、実存する人物と、実際にあった出来事を扱うので、ドラマというよりはどちらかというとドキュメンタリーを見る感覚に近い。

ドラマを見ていつも感じるのは江戸時代までは人の命が実に儚かった。『篤姫』に登場する副主役級の13代家定は34歳、14代家茂が20歳で若死したが、ご両人とも毒殺されたという説が有力のようだ。今の首相なら突然地位を放り投げても、次の日には涼しい顔をしているが、当時は地位を守るのは命がけなことが分かる物騒な時代だったようだ。

ニュースによると、1月6日の放送開始以来6月15日の放送まで連続24回、視聴率20%を越え続け、過去10年間の大河ドラマにおいては、『利家とまつ』の22回連続を上回り、20%連続記録を更新したのだそうだ。

昨年原作を読んだ時点で、今回は女性が主人公で、その舞台も大奥なので、今までの戦国武将が主人公の大型のドラマとは少々性格が違って、視聴率が下がるのではないかと思っていたが、なかなかどうして飛んだ思惑はずれだったようだ。今まで大河ドラマを見なかった女性や若い世代の視聴者が増えて視聴率が上がったのかもしれない。

大河ドラマは例年年末に総集編を放送するが、NHKに寄せられた視聴者の声に応えて、第1話からの集中アンコール放送を9月29日(月)からスタートするそうだ。最終回を迎える前に集中アンコール放送を行うのは過去にはなかったという。

2008年9月15日月曜日

次の抗がん剤

サイトの病歴を見ていただけると分かるが、私がガンの手術をしてから早くも5年を越えている。手術の1年後に再発して、抗がん剤のお世話になっているが、効果や副作用などですっきりしないのでこのブログでいろいろな愚痴や不満を書いているが、あまり贅沢は言ってはいられないという気持もある。

黒澤明「生きる」は50年ちょっと前の映画だが、志村喬演じる主人公が自分が余命1年の末期がんと知って、短い余生の中に打ち込む仕事を見つけて、本当の意味で「生きる」物語だった。映画の冒頭の部分でレントゲン写真1枚を見ながら向かい合う主人公と医師の場面を見て、今の医療との違いを感じざるを得なかった。もちろんCT、MRI、PETなどのガンを見つける機材はない。抗がん剤だってない。例えガンと分かっても打つ手がないのだから、当然不治の病だったのであろう。

手術療法の歴史は約100年、放射線療法の歴史は約50年、がんの治療に抗がん剤が用いられるようになってからは、たかだか35年ほどしかたっていないという。抗がん剤の最初はナイトロジェンマスタードという毒ガスの一種をを悪性リンパ腫の患者に投与したのが最初だっというから驚かされる。

私の場合、現在タルセバをやめて休薬中だが、次の抗がん剤の候補はドセタキセル、TS-1などだが、その前に目下静岡がんセンターで取り組んでいる治験薬への参加を提案されているので挑戦を決めた。その治験薬は分子標的薬の一種で、イレッサ、タルセバががん細胞のEGFRという箇所に作用するのに対して、新薬はまた別な箇所c-METに作用する薬だという。理論上正常細胞への影響が少なく、副作用が軽いという期待がされている。先行しているアメリカでの治験ではまだまだ実績は少ないのだが、そのような傾向が出ているようだ。

新薬なので未知の危険もあるが、それを承知で新薬への挑戦をする理由は、今まで抗がん剤2種、分子標的薬2種を試しているが、薬剤耐性になったり、副作用で断念している。既成の抗がん剤はいずれも低い確率でしか効果が期待できないからである。

といっても今回の治験は無条件に参加できるわけではない。3人の枠が予定されており、既に二人が決まっていて、さらに残り一枠に対して自分が3番目の候補者。本人が同意すればいろいろな適性検査を行ってひとりを決めるという手順になっている。

その適性検査は既に先日行ったので、結果は次の検診日(9/24)で判る。

2008年9月8日月曜日

退院後初めての検診

9月1日に退院して、1週間がたつ。
今日は退院後肝臓の数値がどうなったかを確認することを目的とした検診だった。

やることはいつもと同じ、まず採血、そしてレントゲン撮影。そして診察室の前で検診を待つ。

がんセンターではどの病気も殆ど血液検査を行うので、いつも採血が混みあう。今日は休み明けのこともあってすごい混雑振りだった。採血を待つ人が採血室の外まであふれていた。いつもより早めに行ったのだが、それでも30人待ちだった。

混雑のことはよく知っているので、いつも採血室の一番奥の席に座り、文庫本を取り出して読むことにしている。約40分ぐらい待っただろうか、順番がきた。

レントゲンの後、診察室で呼ばれた。前回はただ事ではない雰囲気を漂わせていた先生も今日は穏やかな表情をしていた。案の定、血液の数値は合格だった。
GOT=28(10~40)、GPT=33(5~40) ()内は許容範囲
前回の異常な数値が信じられない。

レントゲン映像も(CTのように正確ではないが)変化は見られないという説明だった。

肝臓の数値も正常に戻ったので、飲んでいる肝臓の薬を今日でやめる。

私の気持としては肝臓の数値が正常になったので「さあ、次の抗がん剤を・・・」と、気持があせるのだが、「まぁまぁ」という感じで先生に諌められた。肝臓の数値上昇で身体にはかなりのムリがかかったので、身体を休める期間が必要。

カレンダーを見ながら9月22日にCT検査を行い、24日に次の方針を決めようということに決まった。やはりタルセバは使用を中止する。24日までに今までと違う抗がん剤の候補か、治験薬の候補を検討しておくということになった。

2008年9月2日火曜日

無事退院

昨日9月1日(月)無事退院した。

朝、採血して、結果の数値が前回より下がっているようなら、退院して、自宅で飲み薬での治療に変えると言われていた。
採血結果はGTP=135。まだ正常値よりやや高いが、自宅で薬を服用すれば下がる目途が付いたということで退院となった。

入院から13日目、ドタバタの13日間だった。

今回の入院はガンの治療ではなく、治療用の薬を服用したことでその副作用での入院だった。

ガンという病気の難しさは治療に使用する抗がん剤のどれをとっても、激しい副作用があり、その副作用で命を落とすことも珍しくはない。

医師がガンに対する治療方針を説明する際、2つぐらいの選択肢を上げ、3つ目に必ず「何もしない」という選択肢を付け加える。このことはどの抗がん剤にも必ず副作用があり、抗がん剤で命を落とす危険性を覚悟せよということ、そしてそれと闘う姿勢を持たなければ治療に絶えられないということを示している。

患者によっては激しい副作用に耐えるぐらいなら、ガンを受け入れ、安楽に暮らした方がよいという患者も結構多いようだ。それも一つの選択肢でその考え方は尊重しなければならない。そして、場合によっては副作用で命を落としたり、副作用の苦しさで寿命を縮め、結果的に何もしない方が良かったという場合もある。

それでも私の場合は現在のところ(将来は分からないが)人一倍好奇心が強いせいか、まだまだ生きていろいろなものを見てみたいという気持が強い。従って、どの抗がん剤にトライしようとも、どんなに副作用が苦しくても、生きる可能性の方に賭けたいという考え方に変化はない。

今後の予定は1週間後の9月8日(月)定期検診をして、その後の治療方針を決める。残念ながら、タルセバは私の場合、肝臓への影響が重篤なので服用は中止する方針のようだ。当日午後「骨シンチ」受診(転移の検査)。